連載読み物

おひさま堂創世記 ~豆と笑いの冒険譚~

「商いは冒険、豆は相棒」――おひさま堂が歩む、ちょっと不思議な旅の記録。

前書き(はじめての方へ)

この連載は、中世RPGファンタジー世界で営む「おひさま堂」を舞台に、豆と笑いに満ちた創業譚をゆるく綴る読み物です。 市場のうわさ、旅人の土産話、ちょっとした失敗と小さな発見――そんな“商人ギルドの日誌”を覗き見る気持ちでお楽しみください。

物語の途中に登場する商品や素材は、実店舗・通販の品とリンクしています。気に入ったら、 店先(商品一覧)もどうぞ。

第1話

朝露の市場で、最初の一粒

市場の朝は、勇者の出立より早い。
露に濡れた天幕の下、わたしたちは小ぶりな木箱を抱えて店開きの支度をしていた。豆を量る秤は祖父の形見、皿は旅芸人から譲り受けたもの――どれも少しずつ物語を連れている。

「最初の客は風だよ」と先輩が言う。帆を膨らませる風が、香ばしい匂いを通りに運ぶ。鼻先をくすぐられた猫がのそりと現れて、箱の影で丸くなる。やがて、革袋の音とともに足音が近づいた。

「旅の豆屋さん、朝露の味はあるかい?」――旅の吟遊詩人

わたしは頷き、まだ温かな焙煎豆を小袋に詰める。朝一番の袋には小さな印――おひさまの刻印を押すのが習わしだ。詩人は匂いを吸い込み、目を細め、そして一曲分の代金を置いた。


こうして「おひさま堂」の一日目は、歌と豆の香りではじまった。――続く。

次回予告

“ギルドの門前、謎の依頼書。”
次回「銀貨一枚、相棒は二粒」――お楽しみに!