おひさま堂創世記 ~豆と笑いの冒険譚~

連載読みもの

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ここに記されしは、「おひさま堂」という名の小さき珈琲屋が誕生するまで、そしてその後に歩んだ数々の旅の記録である。 剣も魔法も出てこない──代わりに現れるのは、豆を煎る炉の唸り、街道沿いの奇妙な出会い、そして時折やってくる病や災いの魔物たち。

これは壮大な英雄譚でもなく、国を救う大冒険でもない。 けれど、日々の営みの中で笑い、時に頭を抱え、それでも前へ進む──そんな騒動と奮闘の年代記だ。

どうか気楽に読み進められよ。 読み終えた時、ほんの少しでも笑みがこぼれ、心に一杯の温かい珈琲が満たされることを願いつつ、豆屋の女房が記せし戯言と思われたし。

   

第2章 賢者の神託と幻の芝生競技 ― 勇者、療養のはずが王国の大会へ ―

勇者(=夫)が心臓の魔獣との戦いを終えて半月。
自宅の城壁内での静養を経て、いよいよ再び城(=職場)へ戻る日がやってきた。
「これで日常に帰れる」と思ったその矢先──城の賢者(=産業医)が立ちはだかる。

「そなた、まだ働いてはならぬ。少なくとも一月(ひとつき)は出仕を禁ずる。」

これは命令というより、もはや神託であった。
ありがたくも十分な休養が与えられることになったが、どう過ごせばよいのか…私(=豆屋の女房)は見当もつかない。再び魔物に襲われる不安も消えてはいないのだ。

しかし当の勇者はというと── 「堂々と休めるぞ!これはもうのんびりするしかない!」
と、満面の笑み。どうやら“療養生活”を新たなクエストと勘違いしているようだ。

ところが、始まったばかりの静養の旅路は、あっという間に別方向へと進んでいく。
体力回復のため、外へ出て芝生の戦場(=ゴルフコース)へ…ならまだしも、勇者が向かったのは居間の大広間に置かれた魔導装置(=PlayStation)。
そこで始まったのは、幻の芝生競技「みんなのゴルフ(通称:みんゴル)」であった。

朝日が昇れば即ログイン。
日が傾くまで延々とボールを打ち続ける。
気づけば、勇者はジャンボ尾崎か青木功か──いや、筆者の年齢がバレる比喩はこの辺にしておこう──と思うほどの腕前になっていた。

ついにはPGA(=PlayStation ゴルフアカデミー?!)ツアーへ参戦し、好成績を収めるまでに成長した勇者。
「まさか、エンジニアからプロゴルファーへ転職をもくろんでいるのか…?」
そんな不安をよそに、勇者は今日も幻の芝生を駆け巡る。

こうして、「心身を癒すための休養」という名のクエストは、いつの間にか“王国ゴルフ選手権制覇”という別のミッションに差し替えられたのであった……。はぁ~。


次回予告

第3章 戦場復帰と働き方の書 ― 新たなる戦術を求めて ― お楽しみに!